富士山南東斜面の森林限界付近と御殿場二子山付近の2ヶ所に永久コドラートを設置した。本年度は初年度であるため、まず個体群の構造を詳しく調査した。同時に種子の生産量を測定した。種子は花序あたり平均100個生産された。最大の個体は1花序あたり500個生産したが、それに対し花はつけても種子を全く生産しない個体が約20%存在した。生理学的性質については、個体をロゼットの大きさから大、中、小の3群に分け、各々の個体の光合成能力と貯蔵物質の季節変動の測定を行った。 その結果、フジアザミの個体群は1年から6〜8年の令を持つ個体からなり、令の若い個体から8年目までの個体の数はL字型を示した。光合成能力は大型個体については生長開始時に高く、種子が生産される生長終期には急速に低下した。それに対しロゼットの直径が数センチメートの小型個体は性長期間の終わりである、9〜10月に高い値を示した。現地の移植実験と播種実験は攪乱の強い所から攪乱のない自然区まで、段階的に6ヶ所について行った。その結果攪乱の強い地点では種子の発芽は見られず、移植個体のほとんどは消失した。移植と礫の移動防止については本年度の調査では顕著な効果は見られなかったが、越冬期を経過した4〜5月には、明らかな効果が見られるものと期待される。 来年度の主なもく的である実生の移植・育成実験には多くの種子が必要となる。本年度の室内実験により、種子から実生を育成する過程が温度条件・光条件を中心にほぼ確立した。そのため、来年度の播種・移植実験は十分量の実験個体を使用して、実験を行うことができる。
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