研究概要 |
富士山において宝永の噴火により裸地化した地域は、南東斜面に広く広がり、標高1,400mの位置にまで裸地が分布している。このような裸地の面は雪崩やスラッシュが頻繁に発生する。近年これらの自然災害に加え、人為的な撹乱が至るところで生じ、裸地化が拡大しつつある。 上述のような撹乱された場所は、可能な限り撹乱以前の状態に復元することが望ましい。本研究は復元に関しての技術的な諸問題を解決することを目的としている。復元に対してもっとも適した植物の種類は、予備実験においてフジアザミであった。ここではフジアザミとフジアザミの群落に出現する他種を考慮し、いくつかの研究を試みた。研究は主としてフジアザミを対象として行った。これに加え、フジアザミと共存して生育している、イタドリ、ミヤマオトコヨモギ、ヤマホタルブクロ、ヤハズヒゴタイについても、比較研究のため詳しい調査を行った。 フジアザミは、生産した花すべてに種子をつくるわけではなく、結実率(種子生産花数/全花数)は、50%程度であった。しかし、種子生産花は1花序内に多量の種子を生産し、それらは重量において約3倍もの変異を示した。また、フジアザミの生育地においては土壌の撹乱が特徴的な環境条件である。本研究においては、この種子重量と被土が、撹乱の大きい生育地における実生の定着と関連性をもつことが明らかとなった。さらに砂礫移動防止に対して、大きな役割を果たしていることが明らかになった。
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