研究概要 |
ポリ塩化ビフェニル(PCB)は、塩素座瘡等の人体影響に加え、ダイオキシン類(ポリ塩化ダイベンパラダイオキシン(PCDDs)、およびポリ塩化ダイベンゾフラン(PCDFs))に類似の物質として、極めて毒性が高く、かつミルク、魚類などへの環境移動、植物連鎖からヒトへ経口摂取される環境汚染物質として、注意すべきことが明らかとなってきた。とくに近年、塩素化ダイオキシン、ジベンゾフランと類似の構造を有し、毒性発現機構が同様であることが分かってきたコプラナー型PCB(とくにノンオルソ型コプラナーPCBとして、3,3′,4,4′-tetraCB,3,3′,4,4′,5-pentaCB,3,3′,4,4′,5,5′-hexaCBの3種)に対する知見蓄積が緊急性をもって求められる状況にある。本研究では燃焼にともなうコプラナーPCBをはじめとする有機塩素化合物の挙動とその生成機構、燃焼残渣の溶出挙動を中心に検討している。平成7年度では、(1)先端産業関連研究開発における有機溶剤廃棄の調査と、(2)燃焼過程におけるコプラナーPCBの挙動解析、に検討を行った。電子産業、精密機械産業をはじめとする各種産業分野においては種々の化学物質が使用されるが、とくに有機溶剤は各種洗浄や抽出工程等で不可欠となっていることを背景に、研究開発段階の有機溶剤使用量の伸びは著しく、京都大学の例では廃溶剤量として、ここ10年で約2倍となっていることがわかった。研究開発段階の廃溶剤の適正処理が求められるのがもちろんのこと、将来の産業利用にともなう廃溶剤の量増大と質の多様化が予想される。 ダイオキシン発生負荷が最も多いとされる都市ごみ焼却については、コプラナーPCBの存在が確認された。そのレベルは、2,3,7,8-TCDD毒性等価換算濃度として、ダイオキシン/ジベンゾフラン総量に対して10%程度であり、トータルのPCB濃度に対しては5〜10%と評価される。フライアッシュが関与する気固反応過程における生成分解挙動(de novo合成)が起こっているものと考えられるが、燃焼過程栓体として、ダイオキシン類と同様の、“Trace Chemistries of Fire(燃焼過程の微量化学物質生成)"が起こり得るものと推測される。
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