研究概要 |
1,平成8年度の研究計画は次の3点である。 (1)銅イオンの認識機能性メンブランプレートの試作。 (2)合成したメンブランプレートの銅イオンに対する発色応答性能評価と最適な発色条件の設定。 (3)鉄(III)イオンの高認識機能性ポリマーメンブランプレートによる鉄イオンの目視定量。 2,上記の計画に対して、下記の研究が遂行された。 (1)銅イオン認識メンブランプレートの合成:バソクプロイン-ニトロフェニルオクチルエーテル-PVC系、SABF-フタル酸ジオクチル-PVC系から成る2種のメンブランプレートを試作した。 (2)銅イオン認識メンブランプレートの特性評価:2種類のプレートについて、pH、対イオンの種類と濃度、反応温度、銅イオン濃度依存性、共存イオン等の種々の発色応答性能評価を行った。さらに原子吸光光度法との定量値の相関について検討を加えた。 (3)メンブランプレートによる金属イオンの目視定量:現在検討中である。 3,本年度の研究により、次の知見が得られた。 (1)バソクプロイン系メンブランプレートは、銅イオン試料に緩衝液、対イオン及び還元剤を加え、プレート上に滴下し60℃で加熱蒸発することで、試料部が橙色のスポット状に発色し、視覚的に銅(I)イオンの存在が確認できることがわかった。一方、SABF系では同様に橙色に発色し、銅(II)イオンが確認できた。 (2)錯体の安定性が良好であったバソクプロイン系において、プレート上のスポットの着色強度(吸光度)は、10^<-7>〜10^<-4>Mの広い濃度範囲で比例関係にあり、分光光度計により定量できることが分かった。 (3)環境試料に共存する種々の金属イオンの妨害も無く、選択的に銅イオンを検出できることを見出した。 (4)鉄イオンの目視定量に関しては、現在、原子吸光光度法との定量値の相関について検討中である。
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