1.本研究の目的は次の3点である。 (1)水試料中の金属イオンの存在を認識し、その濃度に応じて発色するメンブランプレートの合成。 (2)金属イオン認識メンブランプレートによる金属イオンの分光学的定性 および定量への基礎条件の検討、さらに目視定量への応用。 (3)本法の金属イオンの目視定量法と従来法(吸光光度法、原始吸光光度法)との定量値の相関の解明。 2.上記の目的に対して、下記の研究が遂行された。 (1)銅(II)または(III)イオンに応答するポリ塩化ビニルメンブランプレートの合成。 (2)合成したメンブランプレートの性能評価。(pH、対イオン種、温度、金属イオン濃度と発色強度の相関、定量値の再現性、検出限界濃度、共存イオンの影響等) (3)既知濃度の金属イオン試料に対して、本法の目視定量法、吸光光度法、原子吸光光度法による定量値の相関の解明。 3.本研究により、次のことが明らかとなった。 (1)目視定量において、メンブランプレートは、いずれも5×10^<-6>〜1×10^<-3>mol・dm^<-3>濃度の銅または鉄イオンが、バラツキ10%以下で定量できる。 (2)メンブランプレートを用いた吸光光度法および目視定量法との定量値は、0.99以上の高い相関を示した。 (3)目視定量法及び原子吸光光度法との定量値の相関も、高い傾向にあった。 (4)作成した全鉄イオン、全銅イオン測定用の2種のメンブランプレートは、その色強度(鉄イオンに関しては赤色、銅イオンに関しては橙色)を濃度との対応表と比べることで、共存イオンの妨害も無く、簡易に同時に多数の試料が目視定量できることが見出された。
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