下水道普及率の向上に伴い、汚泥処理対策の必要性が一層高まっていることに鑑み、下水処理場からの余剰汚泥量の発生を少なくすることが必要である。本研究は、ばっき槽での汚泥生成量の低減化に原生動物・後生動物の汚泥摂取能力を活用することを考え、場槽へ芯入りひも状接触材を導入して原生動物・後生動物が生息できる付着ばっきを形成し、それによって汚泥生成量の少ないばっき槽システムを確立することを目的としている。 まずばっき槽への芯入りひも状接触材を設置した場合としない場合について活性汚泥を培養して原生動物・後生動物の存在量、さらに汚泥増殖量を比較する実験を行った。当初連続方式、さらにFill and draw方式による培養を試みたが、前者では汚泥の流出があって汚泥の収支が取れず、また後者では基質の濃度変動により原生動物・後生動物が消失したためいずれも比較ができないことが明らかになった。さらに連続流入・回分流方式による培養を行い、この方式が、汚泥の収支が取れ、また原生動物・後生動物を維持できる方式であることを確認した。 そこで本方式により、芯入りひも状接触材の設置の有無のみが異なる容量約2リットルの培養装置において、ペプトン、肉エキスを主体とする合成排水での比較培養実験を行った。1日1回1リットルの水を入れ替えることとし、当初MLSS濃度を1000mg/1と一定とし、TOC容積負荷を0.05〜0.15gTOC/l・dで運転した。その結果、顕微鏡による計測結果から、接触材の設置した培養槽の方が原生動物・後生動物の固体数が多くなり、しかも汚泥の増加量は接触材の設置しない場合の約1/2であった。これにより、芯入りひも状接触材の設置が汚泥増殖量の低減化に効果があることについて基礎的知見が得られた。今後はこの実験手法を活用してさらに種々の培養条件においても比較を行っていく必要がある。
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