研究概要 |
工業排水や農業排水中には塩素系含有物が微量に含まれていることが多く、これらの物質は河川や湖沼や海洋を汚染する。このような水質汚染を低減するには微量有機物の除去法を開発することが必要である。除去法として、装置が簡単で、処理コストが低く、低濃度汚水の処理が可能である溶媒浮選法の適用を検討した。溶媒浮選法を用いて回分式および連続式操作によって水溶液から微量有害有機物の除去を行った。除去対象有機物はモノクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、ナフタレン、トリクロロエチレン、トルエン、フェノール、4-モノクロロフェノール、2,4-ジクロロフェノール、2,4,6-トリクロロフェノール、ペンタクロロフェノール、クロロ安息香酸、クロロサリチル酸およびトリクロロエチレンであった。回分操作では物性の異なる種々の有機物の除去について試験を行い、揮発性および疎水性の強い有機物に対して高い除去率を得た。さらにガス流量、水溶液と溶媒相の相比、水溶液中の有機物の初濃度およびpHを変化させて、水溶液から有害有機物を除去する試験を行った。回分および連続式溶媒浮選法に対して、揮発性で界面活性な有機物を対象とした除去機構のモデル化を行った。有機物の除去機構は主として気泡とカムラ内の分子拡散によると考えた。気泡による有機物の輸送は気泡表面への吸着、気泡内への揮発および境膜への同伴から構成されると仮定した。回分操作では、本研究で用いた全ての有機物について実測値とモデル式からの計算による除去率はほぼ一致した。したがって、水溶液からの有機物の除去機構は上に述べた除去機構によって説明できると考えられる。本分離法を工業的に用いるためには、連続操作における除去モデルが必要である。回分式の除去モデルを拡張することによって連続式操作モデル化し、モデルによる計算値と実測値を比較検討した結果、このモデルは実測値とよい一致を示した。
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