研究概要 |
トートマイシンジカルボン酸の単離に成功し、ジカルボン酸、無水マレイン酸が安定に存在する弱酸性条件下、ホタル生物発光系を用いた検定法で活性評価を行ない、トートマイシンジカルボン酸のみが蛋白脱リン酸酵素阻害を示すことを明らかにした。次に、活性型であるトートマイシンジカルボン酸の3次元構造の決定を行なった。それに先立ち、計算方法の妥当性を調べるため、X線結晶解析で構造が決定されたオカダ酸について、重クロロホルム中でNMRを測定し、全プロトンの帰属を行なった。NOESYにより得られた距離情報、結合定数を用いて、NMRgraf,Biograf(Dreiding II Force Field)による分子力場計算で安定コンホメーションを求め、結晶中と同じコンホメーションを得た。同様の手法をトートマイシンジカルボン酸に適用し、安定コンホメーションの1つを得た。トートマイシンおよび22-デオキシトートマイシンのアルカリ条件下での安定性の差から、トートマイシンのアルカリ分解の機構を提唱したが、これは、得られたコンホメーションを指示するものであった。トートマイシンから調製したΔ^<21,22>-トートマイシンおよび22-デオキシトートマイシンが活性を示さないことから、21,22位付近の構造の重要性が示唆された。現在22-デオキシトートマイシンの安定コンホメーション決定を進めているが、Biograf (Dreiding II Force Field)計算による予備的な結果として、トトマイシンと類似の21位付近で折れ曲がった構造が得られており、22位水酸基の電荷が活性発現に不可欠であることが示唆された。
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