研究課題/領域番号 |
07680629
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
生物有機科学
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
飯田 彰 京都大学, 薬学部, 助教授 (40202816)
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研究分担者 |
長岡 康夫 京都大学, 薬学部, 助手 (90243039)
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研究期間 (年度) |
1995 – 1996
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キーワード | 人工イオンチャンネル / ペプチドバンドル / トリコデルマポリスポーラム / トリコスポリン / ペプタイボール / 電位依存性チャンネル / 不完全菌 / バレルステーブモデル |
研究概要 |
不完全菌Trichodermapolysporumの産生するペプタイボールと称される20残基の両親媒性ペプチド、トリコスポリンの誘導体やトリコスポンをコアとしたヘリックスバンドル(ペプチドバンドル)型複合体の合成を行い、トリコスポリンの電圧依存性イオンチャンネル形成特性とその安定化因子の明確化、またそれらの分子構造論的基礎確立への展開を目指した。天然型トリコスポリン分子の高次構造は保持されたテンプレート型2量体と4量体ならびにジスルフィド型2量体2種を含むトリコスポリン誘導体は、いずれも電位依存性のイオンチャンネルを形成した。同時に、多量体のチャンネル寿命は、単量体のそれよりも極めて長いことが明らかになった。したがって、両年度で達成された成果は、ヘリックスバンドル型複合体として制御されたトリコスポリンチャンネルの安定化に成功するにとどまらず、チャンネル形成ペプチド研究の理論的基盤であるバレルステーブモデルを実証するにまで至った。以上、本研究と同時に行ったトリコスポリン誘導体の詳細なチャンネル形成特性の結果とを合わせ、トリコスポリン分子が安定なチャンネル機能を発現するためには、 1.膜の厚さと極めて厳密に一致するペプチドのヘリックス長と 2.ペプチド-脂質-水から構成される超共役分子の形成が重要であることが結論づけられた。 また、チャンネル形成の安定化を促進する因子として、 3.ヘリックス分子の脂溶性とヘリックス構造に折れ曲がりを誘導するPro残基の重要性が明確にされた。 したがって、これらの研究成果を礎に、生体内イオンチャンネル研究や未知なる機能性材料の開発研究への展開が可能となった。 さらに興味深いことに、新たに単離したアミノ酸11残基のペプチド、トリコロビンがトリコスポリン複合体と同様に寿命の長いチャンネルを形成することを発見した。この今までに例を見ない分子挙動は、新たなチャンネル形成機構が存在する可能性を示唆している。したがって、トリコロビンを用いた今後の研究は、既存の理論をさらに発展させた分子構造論への展開が期待できる。
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