イオンチャンネル形成ペプチドの分子間会合とチャンネル構造の安定化に寄与する因子、及びイオン選択性を発現する構造の解明を目的として、生体膜を貫通するに長さのモデルペプチドの合成を試みた。合成は液相法で行った。Aibの縮合は混合酸無水物法、Trp側鎖インドールはホルミル基で保護した。現在、各ペプチド断片まで合成が完了した。さらにペプチドの迅速合成のため、Aib含有膜貫通型のモデルペプチドの固相合成について検討した。合成はアミノ保護基に9-フルオレニルメトキシカルボニル基を用い、縮合剤はウロニウム系のHBTU-HOBtを使用した。縮合後、トリフルオロ酢酸(TFA)で脱保護、脱樹脂を同時に行い、エーテル沈殿により粗ペプチドを得た。合成品はHPLCで確認した。 CD測定はリン酸緩衝液中、トリフルオロエタノール(TFE)中及び、リン脂質膜中で測定した。各アナログは鎖長延長に伴い、ヘリックス含率が増加した。水溶液中で各ペプチドとも両端の数残基を除き、中央部は完全なヘリックス構造をとっていることが推定された。ペプチドの濃度依存性実験から、各アナログは濃度上昇に従い、ヘリックス構造が増加しており、2次構造形成に関して濃度依存性が見られた。また[θ]222/[θ]208の吸収比が1.0〜1.2であり、ヘリックス-ヘリックス相互作用が観察された。中性および酸性のリン脂質からなるリポソームと各ペプチドとの相互作用を検討した結果、長鎖ペプチドはリン脂質膜との相互作用により、水溶液中での自己会合では起こり得なかった高いヘリックス構造形成が見られた。また、リポソーム中のアラメチシンと類似のパターンを示した。 以上の結果からAibを含む長鎖ペプチドは、アラメチシンと同様に、ヘリックスバンドルを形成した分子集合体が、ヘリックス軸を膜平面に対して垂直に配向していることが示された。
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