研究概要 |
天然物由来の抗菌性ペプチドは、菌体膜のバリヤ-を壊す事が知られている。この様式としてチャンネル形成、膜構造の損傷、膜の可溶化が考えられている。しかし、多くの研究がされてきたアラメチシンにおいてもペプチド間相互作用及び膜への配向様式は未だ解明されていない。今回このAib含有ペプチドのリン脂質膜相互作用の解明のため、Ac-(BKBA)n-NH_2(BKBA-n,n=1-5)及びAc-(AKAA)n-NH2(AKAA-n,n=1-5)、さらにリン脂質膜へのペプチドの親和性解析のため構造因子Trp含有ペプチドの合成を行った。 ペプチド合成は固相法で行い、構造はESI-MSで確認した。逆相HPLCでBKBA及びAKAAペプチドは鎖長依存に伴って溶出された。これは長鎖ペプチドでは分子が疎水性相互作用によって会合し、その表面の疎水面が減少していると考えられた。ペプチドの2次構造はCDスペクトルを用い評価した。リン酸緩衝液中でBKBA及びAKAAは共に鎖長依存に伴いヘリックス構造の増加を示し、中性脂質DPPCと酸性脂質DPPC-DPPG中ではBKBAペプチドの顕著なヘリックス構造の誘導が示唆された。一方、AKAAペプチドは酸性脂質上でヘリックス構造を形成したが、中性脂質ではヘリックス構造を示さなかった。膜摂動は蛍光物質カルセイン内包リポソームからの漏出実験により評価した。12残基(n=3)以上では鎖長依存に伴い漏出能が増加した。AKAA-20(n=5)は高濃度(10μM)でも全く漏出能を示さなかった。BKBA-20(n=5)は同様の現象はなく、また他のペプチドにはみられない。B=Ab,K=Lysの機能因子としての興味ある事実が示された。
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