研究概要 |
本年度も昨年と同様にモデル化合物の末端のアルコール性水酸基をアミノ基に置換した化合物と末端のアルコール性水酸基の異性体の合成を行った。 1)3′(S),3"(S)-N-〔3-carboxy-(3-amino-3-carboxypropylamino)propyl〕glycine(1)の合成 1はN-C間での結合を切断すると、L-ホモセリン2分子とグリシンに分割される。従って、L-ホモセリン(4)とグリシン(5)を用いて、順次N-C間で結合させることにより、目的とする1の合成が可能である。そこで、L-ホモセリン(4)のアミノ基をBocで保護し(6)を得る、次に5を水酸化カリウムで処理し、カリウム塩(7)とし、続いてベンジルブロミドを作用させベンジルエステル体(8)へと導いた。8はビリジニウムクロロクロメイトで酸化することにより、アルデヒド体(9)を得た。6をp-トルエンスルホン酸で処理し、得られたラクトン体をトリフロロ酢酸で処理し、L-ホモセリンラクトントリフロロ酢酸塩(10)とする。10と9の縮合で得られるシッフ塩基を中性条件下、水素化シアノホウ素ナトリウムを用いて、N-アルキル体(11)へ変換し、イミノ基はBocで保護し、水酸化カリウムで11のカリウム塩とし、続いてベンジルブロミドを作用させベンジルエステル体(12)へ導いた。11はピリジニウムクロロクロメイトで酸化することにより、アルデヒド体(13)とし、12は4のp-トルエンスルホン酸塩との縮合で得られるシッフ塩基を水素化シアノホウ素ナトリウムを用いて、N-アルキル化体(14)へ変換した。14を接触還元およびトリフロロ酢酸にて保護基を順次除去し、ダウエックス50W(H^+)、セファデックスG-10を用いるカラムクロマトグラフィーにて脱塩、精製を行い、1を得た。 2)2(S),3′(S),3"(S)-N-〔3-carboxy-(3-amino-3-carboxypropylamino)propyl〕homoserine(2)の合成 2は1の合成中で得られるアルデヒド体(13)と4を用いて、N-C間で結合させることより、目的とする2の合成が可能である。そこで、アルデヒド体(13)と10との縮合で得られるシッフ塩基を水素化シアノホウ素ナトリウムを用いて、N-アルキル化体(15)へ変換した。15を接触還元およびトリフロロ酢酸にて保護基を順次除去し、最後に水酸化カリウムで開環し、1と同様に脱塩、精製を行い、2を得た。 3)3′(S),3"(R)-N-〔3-carboxy-(3-hydroxy-3-carboxypropylamino)propyl〕glycine(3)の合成 3も1と同様にN-C間での結合を切断すると、2(R)-ヒドロキシ-酪酸、L-ホモセリンとグリシンに分割される。従って、α-ヒドロキシ-γ-ブチロラクトン(16)、L-ホモセリンラクトン(10)とグリシン(5)を用いて、順次N-C間で結合させることより、目的とする3の合成が可能である。そこで、光学活性のα-ヒドロキシ-γ-ブチロラクトン(16)をDーリンゴ酸(17)を出発物質として大船等の方法に準じて合成を行い、現在Dーリンゴ酸のアセトナイド(18)のジメチルスルフィド-ボランコンプレックス還元の条件検討を行っている。
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