研究概要 |
PFK-2/F2,6Pase(6-Phosphofructo-2-kinase/Fructose-2,6-bisphosphatase)は,解糖系の律速酵素の一つであるPhosphofructokinaseの最も強力な活性化因子であるFructose-2,6-bisphosphateの合成(PFK-2)および分解(F2,6Pase)を触媒する二機能性酵素である.哺乳動物の本二機能性酵素は各臓器で構造が異なり,肝,骨格筋型,心筋型,精巣型アイソザイムなどが報告されており,臓器特異的な遺伝子発現機構と連関した本酵素の糖代謝調節における役割の解明が期待されている.本研究では,極めて特異な臓器である胎盤の二機能性酵素はどのような構造と特性を有しているかを明らかにするため,平成7年度にはヒト胎盤から本酵素のクローニングを行った.平成8年度は発現ベクターを構築し,本酵素の発現と精製法の確立し,さらに精製酵素の諸性質を明らかにした. 胎盤型アイソザイムの全構造をコードするcDNAを組み込んだ発現ベクター(pBSSK(+)/HP2K)を大腸菌BL21(DE3)にトランスフォームし過剰発現させる条件を確立し,発現タンパク質の精製を行った.大腸菌中抽出液から,DE52及びSephadex G-100クロマトグラフィーによりSDS-PAGEで単一バンドに精製した.精製酵素は,分子量58000のサブユニットからなるホモダイマー構造を有し,他のアイソザイムと同様キナーゼ及びホスファターゼ活性を合わせ持つ二機能性酵素であったが,ホスファターゼ活性は,他のアイソザイムと比較すると極めて低いことが特徴的であった.発現酵素は,プロテイインキナーゼAおよびCにリン酸化され,またFructose-2,6-bisphosphateにもリン酸化されることなども明らかとなった.これらの胎盤型アイソザイムの特性から,本酵素の胎盤における役割を考察することができた.
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