ヒトやラット、マウスなどの腎臓糖蛋白質N-結合型糖鎖の構造はγ-GTPややジペプチジルペプチダーゼ-IVなどを用いて、申請者らのグループが既に明らかにしているが、イヌ腎臓由来のMDCK細胞の糖鎖の研究はほとんど行われていない。そこでどの様な糖鎖の特徴があるか、[^3H]-グルコサミンでメタボリックラベルし、それから可溶化した糖蛋白質をヒドラジン分解・N-アセチル化の後、高圧ろ紙電気泳動、ゲルろ過クロマトグラフィー、各種レクチンクロマトグラフィー、グリコシダーゼ消化などの方法により分析した。その結果、約1/4が高マンノース型糖鎖、残りが2〜4本鎖複合型糖鎖でアセチルラクトサミン繰り返し構造にフコースや2→6結合したシアル酸の結合した構造であることが明らかになった。現在さらにこれらの糖鎖の局在性について検討中である。 一方VIP36のうち、レクチン様活性が存在すると思われる疎水性部分約800個のアミノ酸に対するcDNAをMDCK細胞よりRT-PCR法でクローニングした(Vip800)。Vip800のcDNAをpQE-9の発現ベクターに導入し、大腸菌で大量発現を試みたが発現量が低く、Vip800を充分量精製することができなかった。そこでpGEX-2TKベクターにおいてグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)のcDNA下流につなげ、GSTとの融合タンパク質として大腸菌で発現したところVip800の大量発現に成功した。GSTは抗原として働かないことが明らかにされているため、現在グルタチオンセファロースカラムを用いて精製した融合タンパク質をVip800の抗原としてVip800に対するポリクローナル抗体を作製中である。
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