細胞の極性化は細胞の組織構築及び機能発現に重要な特性である。この極性化における糖蛋白質N-結合糖鎖の役割を明らかにするため、膜上で極性化させたイヌ腎上皮由来のMDCK細胞の糖蛋白質を解析した。まず^<35>S-Met標識した細胞から頂端側及び側底面側へ分泌される蛋白質のレクチン親和性を調べた結果、Con AとAAL結合性に大きな差が認められ両者の糖蛋白質糖鎖に構造上の違いがあることが示された。次に両膜面の糖蛋白質糖鎖を解析するため、膜上で極性化させたMDCK細胞を^3H-マンノース標識し、各膜面をビオチン化してTriton X-100で可溶化した後、アビジンゲルカラムで精製した。これらをヒドラジン分解、N-アセチル化後、高圧ろ紙電気泳動、及びシアリダーゼ消化、メタノリシスで分析した結果、両者の糖鎖とも中性糖鎖:シアル酸結合糖鎖:硫酸化糖鎖の割合が約20:3:1であった。これらをBio-Gel P-4クロマトグラフィーで分析したところ、中性糖鎖は主に高マンノース型糖鎖、酸性糖鎖は繰り返し構造を含む複合型糖鎖であった。また頂端側糖蛋白質糖鎖は側底面側に比べて、高いフコシル化が認められた。 一方、マメ科レクチンと高い相同性を持ち、頂端側輸送に関与していると考えられている蛋白質VIP36の機能を解析した。VIP36の細胞外ドメイン("Vip36"とする)をコードするcDNAをMDCK細胞の総RNAよりRT-PCR法で得た。このcDNAをpGEXベクター内のグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)遺伝子の下流につなげ、E.coliに導入し、発現させた融合蛋白質GST/Vip36をグルタチオン-セファロースで精製した。これをゲルに固定化したカラムに詰め、S-Met標識した頂端側分泌蛋白質を通したところ、pH5.5で結合しpH7.4で溶出された。現在、Vip36と頂端側フコシル化糖鎖との関連を検討中である。
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