研究概要 |
(1) ATP結合ドメイン、あるいはZinc finger領域のシステインに点変異を持つ変異PriAタンパク質を作製した。 (2) これらの変異PriAタンパク質の安定DNA複製における機能を測定した結果,ATP結合能およびZinc finger様構造はともに安定DNA複製に必要であるという予備的な結果を得た。 (3) PriAタンパク質は、ColE1型プラスミドの複製起点近傍に形成されるR-loop構造に結合する。 (4) PriAタンパク質のN端300アミノ酸のみでn'pasと呼ばれる特異的なDNAヘアピン結合には十分である。 (5) データベースを探索した結果、7種類の細菌から、PriA遺伝子の構造的ホモログと考えられる遺伝子を同定した。その中で、マイコプラズマの遺伝子は、Zinc finger様構造は保持していたが、ATP結合/ヘリカーゼドメインの一部が失われていた。 (6) 出芽酵母の全塩基配列中にPriA類似遺伝子が存在するか探索したが、これまでのところ見い出されていない。真核細胞における、PriAの機能的ホモログは構造的には細菌の遺伝子から大きく変化している可能性が示唆された。 (7) DnaA遺伝子依存性のプライモソームの構造と機能について酵素学的に解析した。 (8) 大腸菌RNAポリメラーゼホロ酵素が認識する、新規な一本鎖DNAプロモーター(RPOサイト)を発見した。このプロモーターは特異的な二次構造を形成し、一本鎖DNA結合タンパク質の存在下で一本鎖の状態で高い転写活性を示す。転写産物は、下流のコード領域の発現とともに、DNAポリメラーゼIIIホロ酵素の存在下でDNA鎖伸長のためにプライマーRNAとしても機能する。RPOサイトは、Fプラスミドの接合伝達複製起点の近傍に存在し、接合伝達に伴う遺伝子発現及びDNA複製に関与する可能性を指摘した。
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