細胞核構造の機能の一端を明らかにするために、核骨格に特異的に結合する高度反復配列DNAと、これに強い親和性を示す核骨格構成蛋白質P123、P130の諸性質について詳細に解析することを目的に実験を行った。前年度までに、両蛋白質の分子量およびその機能的性質が極めて類似していることが明らかにされていたことから、これら分子内に同一の一次構造が存在するのではないかと考え、トリプシンによる部分分解産物を比較・調査した。その結果、両者の電気泳動パターンがほぼ一致していたことから、今年度に計画していた両蛋白質のcDNAの単離には、一種類の蛋白質から得られる情報をもとに行った。両蛋白質ともに、アミノ-末端はブロックされていたことから、P123のトリプシン分解産物を用いて部分的な一次構造の解析を行った結果、得られた配列は新規なものであり、現在cDNAのクローニングを続行中である。一方、両蛋白質はリン酸化蛋白質であることが明らかになり、さらに、フォスファターゼ処理によりDNAとの結合活性が著しく低下することから、これら蛋白質は、リン酸化によってDNAとの結合能が制御されていると考えられた。また、その結合能はチロシン残基のリン酸化に大きく依存していることも明らかになった。従って、両蛋白質のリン酸化状態と機能との関連を現在調査中であり、この結果は、平成8年度に計画した内容をより広い視野で展開できると判断した。さらに、両蛋白質の細胞内での動態を解析するために、これまで行ってきたポリクローナル抗体に代わって、より抗体価の高いモノクローナル抗体を調製中であるが、現時点では十分な抗体価を持つものは得られておらず、種々問題点を考慮に入れながら実験を継続中である。
|