大腸菌FtsHタンパク質はATP依存性プロテアーゼ活性を持つ内在性膜タンパク質である。FtsHはAAA(ATPase associated with various cellular activity)ファミリーと呼ばれる新寄ATPaseファミリーの一員である。AAAタンパク質は原核細胞から真核細胞まで広く存在し、タンパク質の小胞輸送、オルガネラ生成、タンパク質の分解など多様な細胞機能に関与している。我々はftsH変異がモデル膜タンパク質の膜におけるトポロジー形成、分泌タンパク質の膜透過、膜ポテンシャルの形成などに異常を引き越こし、また、幾つかの分子シャペロンの過剰発現によりftsH変株の生育阻害や表現型が抑制されることから、FtsHは分子シャペロンと類似した機能を持つと推測している。一方、FtsHは内在性膜タンパク質SecYの分解に関与することも見出した。SecYはタンパク質透過装置(translocase)の主要な構成タンパク質であり、パートナーサブユニット(SecE)と複合体を形成出来ないとFtsHにより迅速に分解される。本研究において、さらにプロトンATPaseのF_0セクターを構成するαサブユニットが単独で存在するときFtsHによって分解されることを明らかにした。αサブユニットも他のサブユニットと会合して始めて安定に存在できる。また、単独のSecYやαサブユニットとは細胞の生育を阻害することからそれらの迅速な除去は細胞機能の維持に重要である。FtsHは膜タンパク質複合体の「品質管理」に普遍的重要性を持つことが考えられる。
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