高脂血症のモデル動物としてのサル類の可能性を調べるために、予備試験を行った。十頭のカニクイザルを用いてコレステロール負荷実験を行ったところ、通常の飼育条件で、わずか0.1%のコレステロールを含有する固形試料を与えると、二個体は100mg/dlのレベルを維持したのに対し、投与前200mg/dlの二個体では投与4週目には400mg/dlのレベルに達し、他の個体はその中間の値を示した。各個体の投与後1週、3週、6週の値を投与前の値に対してプロットすると相関計数0.9の関係があることが分かった。このことは通常の飼育条件下のサーベイでコレステロール負荷に対する高応答の個体を発見することができることを意味する。 そこで霊長類研究所の5群229個体についてレベルを測定した。群れとしての平均値は144-192mg/dlでヒトの値と大きな差異はなかった。しかし4頭以上の子供を持つ母親について、母親のレベルと子供の平均値のレベルを調べたところ相関計数0.83の相関がみられ、遺伝的バックグランドがあることが明らかになった。 本年はコレステロール負荷に対する高応答のサルについて、その遺伝子的基礎を調べるため、LDLレセプター遺伝子の構造の解析を行った。ヒトのcDNAの塩基配列を基礎として、各部分のDNAを増幅するためのオリゴムクレオチドプライマーを合成し5′フランキング領域、エクソン2、エクソン13から14に渡る領域、エクソン18の内部領域をPCR法により増幅した。これをプローブとし、サザーン分析を試み、高応答と関係のありそうな変化も検出出来た。同じく高応答と低応答のサルのDNAをテンプレートとして、上述のプライマーによりPCR増幅し、SSCP法により分析による解析を開始した。
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