高脂血症のモデル動物としてサル類の可能性を調べるために、予備試験を行った。十頭のカニクイザルを用いてコレステロール負荷実験を行ったところ、通常の飼育条件で、わずか0.1%のコレステロールを含有する固形試料を与えると、二個体は100mg/dlのレベルを維持したのに対し、投与前200mg/dlの二個体では投与4週目には400mg/dlのレベルに達し、他の個体はその中間の値を示した。各個体の投与後 1週 3週 6週の値を投与前の値に対してプロットすると相関計数0.9の関係があることが分かった。このことは通常の飼育条件下のサーベイでコレステロール負荷に対する高応答の個体を発見することができることを意味する。 そこで霊長類研究所のニホンザル等503個体についてレベルを測定した。家系分析を行ったところニホンザルで31家系中3家系、アカゲザルで26中2家系で高コレステロール血症が疑われた。これらについてLDLR遺伝子の変異を調べた。調べた14頭では、アカゲザルで報告されているエクソン6のナンセンス変異に相当するものはなかった。次いでLDLR遺伝子を9領域に分け、LARCR法により増幅しそれらのサイズを比較することを試みた。現在5領域について増幅条件が確立した。エクソン8-10では、ニホンザルは正常値を示すものも他のマカクより約500bp短かった。エクソン12-14では、家族性高コレステロール血症の母親であるアカゲザルで約200bp短いバンドをヘテロで示した。この 200bpがエクソンにかかっているのか現在詳しく調べている。またこの領域はヒトで3.4kbであるのに対しマカカ属サルでは2.7kbであった。今後もこの方向で調べる予定である。
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