リポ酸はグリシン開裂酵素系のH蛋白及びピルビン酸、α-ケトグルタル酸および分岐鎖ケト酸脱水素酵素複合体のE2成分に補酵素として結合している。リポ酸転移酵素はlipoyl-AMPからリポ酸をこれらの蛋白に転移する酵素であり、我々は以前にウシ肝臓よりリポ酸転移酵素IとIIを単一に精製した。今回、この精製蛋白を用いて以下の成果を得た。 1)アポH蛋白をリポ酸の受容体として用いて精製したリポ酸転移酵素I、IIはピルビン酸、α-ケトグルタル酸および分岐鎖ケト酸脱水素酵素複合体のE2のリポイルドメインをもリポイル化した。リポ酸結合部位の3残基N末側のGlu残基はリポイル化において、また11残基C末側のGly残基はリポイルドメイン構造の折りたたみにおいて重要であることが示された。 2)リポ酸転移酵素IとIIのN末端よりそれぞれ20残基と30残基のアミノ酸配列を分析した。リポ酸転移酵素Iの配列はN末端にさらにAsnが付加されていた以外はIIの配列と同一であった。リポ酸転移酵素IIのアミノ酸配列Asn13-Asn18およぴTrp24-Met29こ基づいてオリゴヌクレオチドを合成し、これを用いてウシ肝臓のλgt 10cDNA libraryの2.4×10^6個の独立プラークをスクリーニングし、両probeとhybridizeするクローン1個を得た。このクローンに含まれるcDNAは1.3kbpの長さがあり、リポ酸転移酵素の全長をカバーできる長さであった。今後、この塩基配列を決定する。
|