ミトコンドリアタンパク質前駆体の延長ペプチドをモデルとした合成ペプチドの、精製ミトコンドリアプロセシングペプチダーゼ(MPP)との反応解析から、これまでに以下の点を明らかにしている。1)切断点からアミノ末端側の2ないし3残基前(近位)のAeg、2)そこからさらに5-10残基離れた位置(遠位)の塩基性アミノ酸、3)切断位置のC-末端側の芳香族もしくは疎水性アミノ酸。これらが主要なシグナルとして実際の前駆体タンパク質でも働いていることを、試験管内で合成したリンゴ酸脱水素酵素の前駆体の点変異実験でも確認した(論文作成中)。モデルペプチドを用いた研究でも、近位と遠位の間にさらに塩基性アミノ酸があると切断効率が向上すること(J.Biochem.120)、主鎖にエーテル基を導入したアミノ酸誘導体で、近位と遠位のArgの間を繋げるとペプチドの切断活性が著しく向上することを見いだした。このことと、近位と遠位Argの間におけるProやGlyの存在、これらの他のアミノ酸への置換が切断活性を低下させることは、両Arg間の柔軟性が基質として重要であることを示唆した(論文作成中)。 それぞれのサブユニットを大腸菌で大量発現させる系を確立した。これらのサブユニットを高純度に精製し、再構成することに成功した。この両構成系を用いて合成基質による光親和性標識を行ったところ、基質の切断部位付近は触媒部位のあるβ-サブユニットに結合することが判明した。しかし、基質のC-末端部はα-サブユニットと結合することが判明した。すなわち、両サブユニットが共同で基質認識部位を形成しているを強く示唆している(論文作成中)。
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