1.フィブリン(Fbn)モノマー重合反応を阻害する2種類の抗フィブリノゲン(Fbg)抗体、IF-1、IEF-13の性質とそのエピトープ解析を行った。その結果、IF-1はFbgD3領域中のCa^<2+>金属イオン結合によって惹起される立体構造を、IEF-13はD1領域のγ鎖C末端近傍γ-375-406の架橋結合部位の立体構造を認識し結合することで、2本鎖protofibrilの整列を乱し、irregular Fbn aggregateを形成することを明らかにし報告した。現在、溶液系でのFbnモノマー重合反応の反応機序を明らかにする目的で、両抗体を用いた詳細な実験を行っている。 2.培養血管内皮細胞上でのFbn塊形成反応と細胞損傷との相関----Prothrombin活性化反応とFbn塊形成反応をカップリングした再構成反応系を臍帯内皮細胞と精製凝固因子を用いて作成した。Thrombin生成の初期相ではFbnは生成されず、微量thrombinによる細胞障害の程度が高く、正常の敷石上形態をとれずに伸びきってしまった形態になり細胞死に至る場合が多い。細胞傷害の時期を速やかに経過させ、培養液を添加して継続培養すると正常細胞に回復する。Prothrombin活性化反応中期では、Fbn→Fbn反応が開始され、余剰thrombinを包含したFbn塊が細胞表面上に蓄積されはじめるが、細胞傷害を意味する形態学的変化は認められなくなる。しかし、Fbn塊存在下に継続培養を行うっと4時間後には細胞形態上も細胞表面の性質も全く異なる細胞に変化し、正常細胞には回復可能となる。この反応系に線溶系の因子を混在させると形態学的変化を起こした細胞の修復や増殖が起きるようになり、細胞修復過程とFbn塊の溶解速度とに密接な関係があることが判明した。現在、内皮細胞の質的変化を3次元培養細胞を用いて解析中である。また、単球やマクロファージ系の血球細胞を共存下にFbn塊の形成反応の再構成し、Fbn塊速度やその溶解速度と細胞損傷、増殖の関係を定量的に示すための実験を行っている。
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