研究概要 |
1.ラット肝ミクロソームに生理学的濃度(約10μM)のCoAを加えた際のアシルCoA生成の詳細な酵素学的を進め、本反応の実体から明をにした。アシルCoAのもとになる脂肪酸はミクロソーム中のホスファチジルイノシトール(PI)、次いでホスファチジルコリン(PC)である。Km値は180μM, Vmaxは20nmole/30min/mgroteinである。 2.従来までミクロソームを用いて上記反応を観察してきたが、他の細胞内オルガネラでの反応様式を検討し、特に核のPI CoA dependent transacylaseの存在を証明した。 3.ラット肝よりアシルCoA結合蛋白を精製し反応系に加えることによってアシルCoAとトラップし、反応がどのように変化するか(生理的条件に近ずける)検討した。特にACBP(アシルCoA Binding Protein)存在下ではアシルCaA生成は促進された。 4.本酵素をラット肝ミクロソームより可溶性・精製し、いわゆるランズ系酵素(1-アシルGPIアシルトランスフェラーゼ)との比較等について検討をおこなった。現在の所、本反応はランズ系の逆反応の可能性が強い。 5.アシルCaA,特にアラキドニルCoAがラット肝ミクロソームグルクロニルトランスフェラーゼに反応し、アシルグルクロニルトランスフェラーゼとなることを発見した。このアシル体は酵素として不活性型であり、また反応は自己触媒によっておこなわれる。このAutoacylation-Autodeacylation反応が生体内でどのような役割を演じているか非常に興味深いものがある(ベンツピレンのような発癌性物質の代謝との関係において)。 6.大麻の幻覚作用の本体であるテトラヒドロカンナビノールの受容体に対する内因性アゴニストとしてアナンドマイド(アラキドニルエタノールアミン)が発見されたが、これの生合成ルートへのアシルCoAの関与を研究し本反応はCoAindependent, Ca2+dependentな反応であることがわかった。
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