研究概要 |
顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)受容体を介する細胞増殖と分化のシグナル伝達を解析するため、G-CSF受容体をマウス骨髄前駆体細胞(LGM細胞)上に発現させた。そしてこの細胞をG-CSF刺激すると、種々の好中球特有の形質を示し、好中球へと分化することを見いだした。次に、G-CSF受容体の欠失およびチロシン残基置換点変異体を作成し、細胞で発現させ、その影響を解析した。その結果、G-CSF受容体細胞質ドメインの第4番目のチロシン残基が細胞質タンパク質p54(Shc)リン酸化に、第1、2番目のチロシン残基が好中球への分化誘導(核の分葉化、増殖抑制、ミエロペルオキシダーゼ遺伝子発現)に必須であることが明らかになった。一方、G-CSFによる刺激で特異的にチロシン残基がリン酸化される種々のタンパク質のうち、JAK1,JAK2,STAT3およびShcタンパク質を同定した。JAK1,JAK2のリン酸化にはG-CSF受容体の増殖シグナルに必須なBox1,Box2領域が,STAT3のリン酸化にはさらに分化形質誘導に必須な第1番目のチロシン残基付近の領域が必須であった。 さらに、好中球に特異的に発現する遺伝子のひとつであるミエロペルオキシダーゼ遺伝子の上流域をリポーター遺伝子に結合しG-CSF依存性細胞に発現させ、G-CSF依存の遺伝子の発現を定量し、転写開始点上流800bp領域にG-CSF特異的に遺伝子発現を誘導する部位を同定した。ついで、ゲル・シフト法により、この領域に結合する転写因子(NF/G-CSF)の存在を確認し、オリゴヌタレオチドaffinityカラムを用いて、マウス骨髄性白血病株よりNF/G-CSF転写因子を精製した。精製NF/G-CSFのアミノ酸配列から、この転写因子は既知の転写因子NF-Yと同定された。したがって、NF-YがMPO遺伝子の発現調節に関与していることが示された。
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