1.PCNA遺伝子発現制御エレメントの個体レベルでの解析:PCNA遺伝子発現制御領域に種々の変異を導入した遺伝子導入ハエ百数十系統についてlacZ発現を指標にして、各発生過程において機能する転写制御エレメント(DRE:DNA複製関連エレメント、URE:上流制御エレメント、E2F結合サイト)を同定した。E2F結合サイトは全発生過程を通じてPCNA遺伝子発現に必須であり、DREは発生初期から幼虫期に至る過程で必須となり、またUREは幼虫の各組織での発現に重要であることがわかった。 2.転写因子Ga14の標的組織特異的発現系を利用したDNA複製酵素遺伝子制御因子の解析:野性型DREF(DNA複製関連遺伝子制御因子)を、ショウジョウバエ複眼原基特異的に過剰発現させると、複眼の形態異常が生じることがわかった。これはDREFの過剰発現による複眼原基での、異所的な細胞周期の誘導によってもたらされたものと考えられ、現在詳細な解析を進めている。またdominant negative型DREFを唾腺で過剰発現させると唾腺染色体の倍数化を阻害することが、明らかとなった。これは、唾腺細胞でのendoreplicationの進行にDREFが機能していることを意味している。 3.他の生物種のDREFホモログの検索:抗ショウジョウバエDREF抗体を用いたイムノスクリーニング法により、カイコからDREFホモログのcDNAの候補を複数単離することに成功した。現在それらの塩基配列を決定しつつある。一次構造の比較により、両種でよく保存されているドメインが見つかれば、その部分を利用してPCRプライマーをデザインし、RTPCR法を用いて哺乳動物のDREFホモログを検索する予定である。
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