研究概要 |
1.組織レニン・アンジオテンシン系におけるレニン結合蛋白質遺伝子の発現の検索 レニン結合蛋白質(Renin-binding Protein,RnBP)は、レニンと結合し、その活性を阻害することから、レニン・アンジオテンシン系(RAS)で説明される血圧・体液調節機構の新しい因子である可能性が示唆されている。本研究では、種々の臓器におけるRnBP遺伝子の発現を探索し、RASにおけるRnBPの存在の普遍性を検討した。さらに、初代培養細胞及び樹立細胞株を用いてレニンとRnBPが共発現されている細胞を検索し、両因子遺伝子の発現調節を解析した。その結果RnBPの遺伝子発現は腎臓・副腎・脳・卵巣及び大動脈等の組織において認められた。腎臓における組織学的検索においても、血管系細胞における発現が認められた。ブタaorta由来の血管内皮細胞においては、レニンとRnBPの遺伝子発現がともに認められ、さらにRnBPはAngiotensin II及び8-bromo cAMPにより正の調節を受けることから、Vascular RASの一員としてRnBPが機能し得る可能性が示唆された。 2.副腎及び褐色細胞腫におけるグルカゴンレセプターの遺伝子発現とその構造 既知のラット及びヒトのグルカゴン及びGLP-1レセプターにそれぞれ特異的な塩基配列を有するPCR用のプライマー・ペア-を作成し、肝臓、副腎、ヒト褐色細胞腫並びにPC-12細胞を用いてRT-PCR法にて遺伝子発現を解析した。その結果、副腎並びに褐色細胞腫においてもグルカゴンレセプターの遺伝子発現が認められ、7個の膜貫通領域を含む構造が肝臓で発現されているものと同一であることが明らかとなった。一方GLP-1レセプターの発現はいずれの組織にも検出されなかった。以上からグルカゴンレセプターは副腎においても発現され、組織特異的な情報伝達に関与している可能性が示唆された。
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