研究概要 |
細胞内pHの重要な制御システムであるNa^+/H^+exchangerの普遍型アイソフォームNHE1の活性調節機構を分子レベルで解析し、次の結果を得た。 1.NHE1、NHE3およびそれらのキメラタンパク質のCa^<2+>による活性調節。NHE1は細胞内Ca^<2+>によって活性化を受けるが、腎臓、小腸に特異的に発現する上皮細胞型アイソフォームNHE3は細胞内Ca^<2+>で活性化されない。キメラタンパク質による解析から、NHE1とNHE3のCa^<2+>反応性の違いはその細胞質ドメイン内に自己阻害作用を持つCaM結合部位が存在するか否かによることがわかった。 2.NHE1の細胞内pH(pH_i)感受性を制御する細胞質サブドメインの同定。詳細な欠失変異タンパク質の解析から、NHE1はpH_i感受性の観点からa)aa515-595、b)aa596-635、c)aa636-659、d)aa660-815の4個のサブドメインに分けられることがわかった。サブドメインa,b,cは、それぞれpH_i感受性維持ドメイン、flexible loop、CaM結合/阻害ドメインとして特徴づけられる。 3.NHE1阻害ドメインによるH^+結合の阻害様式。阻害ドメインを他のCaM結合タンパク質(NHE2、NHE4アイソフォーム、CaMキナーゼII、Ca^<2+>ポンプ等)の機能的に類似した領域と置換したり、阻害ドメイン内の詳細な変異導入、さらにはNHE1阻害ドメインペプチドのNHE1タンパク質への光親和性架橋を行った。その結果、NHE1にはその分子内に阻害ドメインを特異的に結合するアクセプターが存在し、それらの相互作用は阻害ドメインのアミノ酸配列に特異的であることがわかった。
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