研究概要 |
スタフィロコッカルヌクレアーゼ(SNase)を用いてプロリン残基の異性化反応と構造形成反応との関わりを研究している。6個のプロリン残基(P11,P31,P42,P47,P56,P117)のうち、P117をGにP47をAまたはTに置換した変異体(P47A,P47T,P117G,P47A+P117G,P47T+P117G)を作成し、それぞれの尿素中での安定性と、ストップトフロー法による折れたたみ反応とを解析した。 平衡測定:pH7.0、20℃の条件下での尿素変性を、光の差吸収の測定とCD測定とを用いて観測した。P47A、P47TはWTとほぼ同じ安定性を有している一方、P117GはWTよりも安定性が増していることがわかった。また、これらの二重変異体はP117Gとほぼ同じ安定性を有していた。 動的測定:WTの尿素濃度4.5Mから0.47Mへのジャンプによる巻き戻り反応は、少なくとも4個の指数項からなることが示唆された。P47AとP47Tの場合には、WTでの2番目に遅い速度過程に相当する相が消失していた。また、P117Gの場合には、WTでの最も遅い速度過程に相当する相の占める割合が減少していた。このことと、各試料についての速度定数の尿素濃度依存性から、WTで観測された4個の速度過程のうち、もっとも遅い相はP117の異性化反応に関係し、2番目に遅い相はP47の異性化反応に関係していることが示唆された。一方、二重変異体の尿素濃度0.47Mへ巻き戻り反応は、4個の指数項で解析された。このことは、SNaseの巻き戻り反応を多相化する要因が、P47とP117の異性化反応以外にもあることを示唆している。さらに、WT及びP47A+P117Gに対して、尿素濃度0Mから各種濃度へのジャンプによるアンフォールディング反応も観測した。
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