最初に、膜タンパク質、水溶性タンパク質を問わず、βシート構造に特徴的な性質を求めるため、βバレル構造を中心として解析した。バレル構造は、膜タンパク質の場合は、バレルの内部に水溶性領域が分布し、外部に疎水性領域が分布する(水溶性のバレルの場合は、その逆)。従って2残基周期で疎水性残基が現われるはずである。そこで、2残基の周期を強調するためのフィルターをかけた疎水性指標を用いて立体構造既知のβバレル型タンパク質(膜タンパク質のポリン、水溶性タンパク質のアビジンなど)の一次構造を解析した。これらタンパク質のβシート領域では、2残基周期が強い領域が、十数残基程度の幅で連なっていることがわかった。これは膜外でのターンを含んだ2本のβストランド対の長さに相当する。このことは、膜貫通ヘリックス型の膜タンパク質や、球状の水溶性タンパク質では、見られない特徴であり、このことを利用して、βバレル型のタンパク質を、判別できることが示唆された。 本研究では、2残基周期を強調するようなフィルターをかけた疎水性指標を用いてβバレル構造に特徴的なスペクトル密度を抽出することができた。当初の計画では、βシート型の膜タンパク質を一次構造から判別する方法を確立することを目視していたため、膜タンパク質(ポリン)の構造だけを中心に解析する予定であった。それに対し今回は、より一般的な見地から予測を行うことを意図して、膜タンパク質、水溶性タンパク質を問わず、βバレル構造を解析した。当初、膜タンパク質と水溶性タンパク質では、同じバレル構造でも、異なる特徴を示すと考えられたが、実際は、膜タンパク質だけのバレル構造を分離するのは困難だった。現在、膜タンパク質であるポリンの構造をより詳細に調べて、水溶性のバレル構造との違いを解析しているところである。
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