平成7年度の予備的研究において、バクテリオロドプシンの構造形成においてバクテリオロドプシンがリン脂質膜中につくる7本のα-ヘリックス(A、B、・・・G)の中、ヘリックスA、B、F、Gはそれぞれ独立したものとして与えてもバクテリオロドプシンの構造形成が起こることを示唆する結果が得られたが、平成8年度の研究においてはその結果を確定するとともに、再構成率の増加と、バクテリオロドプシンの生理的機能、すなわち光駆動プロトンポンプ機能を直接検証することを目指した.再構成率の最適化の中、再構成時間に関しては単独α-ヘリックスからの再構成率は、バクテリオオプシンとレチナ-ル、もしくは大きなバクテリオオプシン断片(キモトリプシン消化で得られるものなど)の場合とは異なり、再構成には50時間以上を要することが判明した.再構成率に及ぼす脂質組成の検討の結果、CHAPS濃度は高いほど、またペプチド成分はペプチド-DMPC比が小さいほど再構成率が高いことが判ったが、従って最適化は実用とは相反することを示しており、現在得られた値、10〜20%を大幅にあげることは難しいと思われる.プロトンポンプ機能についても変化量が小さいために通常のガラス電極での測定は極めて困難で、色素の利用は色素とペプチドとの相互作用のためにうまくいかなかった.α-ヘリックス内残基置換の試みの一環としてレチナ-ルが結合するリシン216を両隣のアラニンもしくはバリンと入れ替えた変異ヘリックスGでは現在未だ再構成に成功していない.しかしいずれにしても膜タンパク質の膜内ドメインの構造はα-ヘリックス間の相互認識で形成されるというわれわれの考えは立証されたと思われる。
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