S-モジュリンファミリーは、外的刺激によって視細胞内に動員されたCa^<2+>イオンを検知して、その後の細胞応答を調節する、視細胞のCa^<2+>濃度センサーである。これら視細胞カルシウム結合蛋白質はCa^<2+>濃度の増加を自らの構造変化の情報に変換して標的蛋白質に伝達すると考えられる。また、S-モジュリンファミリーのもう一つの特徴であるN末端のミリストイル基はCa^<2+>依存的な視細胞外節円盤膜への結合を担っていることが報告されている。 一般に、生命現象の複雑かつ巧妙な機構を理解するためには、それに関わる生体分子の機能とそれらの相互作用を構造的見知から解明することが必要である。本研究では以上のような観点にたち、S-モジュリンとS26の立体構造を明らかにし、その機能を原子レベルで理解することを目的とし、さらにS-モジュリンとS26の構造機能相関を比較、検討した。その結果、 i) 大腸菌によるS-モジュリンとS26の大量発現系を構築し、さらに精製系を確立した。また、得られたS-モジュリンとS26が天然のものと同一であることを示した。 ii) CD、蛍光測定により、Ca^<2+>、Mg^<2+>といった2価金属イオンのS-モジュリンとS26の構造におよぼす影響についていくつかの知見を得た。 iii) S-モジュリンとS26に安定同位体^<15>N、^<13>Cを導入することに成功し、水溶液における立体構造解析をめざした多次元NMRの適用をおこなった。
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