プロテアソームは、細胞内で不必要になった蛋白質を速やかに分解し、細胞の代謝を安定に保つ代表的な細胞内プロテアーゼであり、細胞の周期制御機構を解明する「鍵」酵素である。さらに、沈降係数20S、分子量75万の巨大で不均一な多成分複合体であり、細胞内ではATP非依存型と沈降係数26SのATP依存型の2つの分子種として存在する高分子量・多機能プロテアーゼである。本研究では、この酵素の機能の重要性が分子構造の複雑性と密接な関係にあると考え、分子を壊さず分子内部まで明かにできるX線結晶解析により立体構造解析を行う。 分子量75万という巨大なヘテロ分子集合体として良質の単結晶を得ることができた。この結晶のX線回折実験より、プロテアソーム分子の温度因子は43Å^2であることが分かった。このことはプロテアソーム分子が異型サブユニットからなる複雑な構造を持つにもかかわらず、分子内に結晶学的な高い対称性を持ち、かつ分子全体として異型サブユニットの配置および構造が原子レベルで高度に制御されていることを意味する。これらのことを明らかにした。 また、プロテアソームの精製過程において、クロマトグラフィー操作を複数回繰り返すことにより、新しい結晶系を持つプロテアソーム結晶を得ることができた。この場合の結晶格子は、以前に得られていたものより比較的小さく、立体構造解析を平易にすることが期待できた。格子内の分子の充填様式は基本的には上述のものと同じであるが、比較的単純な様式で充填されているものと考えられた。現在、これらのデータの処理および解析中である。
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