研究概要 |
本研究の主目的は、NMRを用いて野生型とArg14とHis15を欠失したリゾチーム(Δ14,15リゾチーム)の全アミノ酸残基の主鎖の動きを解析し、酵素活性の増加と共役して分子運動が変動している領域を明らかにすることである。このことを達成するためにまず均一に^<15>Nラベル化した野生型およびΔ1415リゾチームが必要となる。ラベル化する試薬^<15>NH_4Clは、高価であることから、効率の良い発現系を確立する必要がある。昨年度では、プロモーターpETの下流にリゾチームをコードする遺伝子を接続したベクターを大腸菌BL21(DE3)に組み込み、リゾチームを発現させる系で、培地1Lあたり(1gの^<15>NH_4Clを含む)、活性構造を持つリゾチーム5-10mg(野生型)、2-4mg(Δ14,15リゾチーム)を調製することができた。しかし、これらのリゾチームは、大腸菌由来なので、N末端にそれぞれのMetが付加している。このために野生型において極端に溶解度が低下し、緩和時間を測定する濃度には不十分であった。そこで、酵母Pichia pastorisを用いた発現系の確立を試みた。Pichia pastorisは、目的の遺伝子をこの酵母のクロモソームに導入し、目的の蛋白質を発現する系である。そのため、正しくはプロモーター下流に組み込まれている株を選び出す必要がある。数百の株の中から、1Lあたり野生型リゾチーム及びΔ14,15リゾチームをそれぞれ10mg程度発現するものを選別した。また、これは、メタノール代謝酵母であり、至適メタノール濃度を検討した。その結果、0.5%のメタノール存在下で、前培養と本培養に^<15>Nラベルした硫安をくわえておくことで、ほぼ定量的に^<15>Nが取り込まれているリゾチーム20mgを得ることができた。さらに、これらのリゾチームは予想どおりNMR測定には充分な溶解度を与えた。現在、これらの縦緩和及び横緩和速度定数、NOEを測定中である。この詳細な結果は、研究成果報告書に記載する。
|