X線結晶構造解析は多重同型置換法に近年開発された多波長異常分散法を組み合わせ、最初に活性中心を構成する金属原子の鉄とニッケル原子の位置を同定し、その後これらの原子の位置を利用して初期の電子密度図を得ることができた。初期の電子密度図は分解能3.5Åで、主鎖の流れを追うのがやっとであったが、溶媒領域平滑化などの電子密度改良法をうまく使うことで、側鎖や主鎖のカルボニル酸素も同定できるほどに電子密度図の質を上げることができた。現在2.8Åの電子密度図上に水素をのぞくほぼ全原子を同定することに成功し、精密化を進めている。小サブユニットはフラボドキシン様の小さなドメインを持つ以外、特に目立った2次構造をとっていないが、大サブユニットは40残基程度の長いαヘリックスを4本も持ち他にβシートも見られる。鉄-イオウのクラスターとニッケル原子はほぼ一直線上に並んでいる。3個の鉄-イオウのクラスターは皆小サブユニットに保持されていることが分かった。11個の鉄原子の配位子は一つを除いて全てシステイン残基のイオウにより配位されている。Fe4S4型のクラスターの1個の鉄はヒスチジンの窒素原子に結合している。Desul fovibrio gigasのヒドロゲナーゼの結晶構造では水素酸化還元機能に最も重要であると考えられているニッケル原子の回りの構造が乱れており、配位子の状況がはっきりしていない。Miyazaki株・ヒドロゲナーゼの現モデルでは4個のシステイン残基のイオウ原子が四面体構造をとってニッケル原子に配位していると電子密度から解釈することができた。
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