研究概要 |
1)正常マウスとXPAマウスの自然突然変異頻度及び種類の比較:HITECマウスの系を用いるために各主要組織からのDNA調製法を検討し、比較的高品質なDNAを調製できる方法を確立した。この実験の課程で、低品質DNAを用いると、大腸菌への導入効率が下がるだけでなく、突然変異頻度が上昇することが解った。また、マウスから回収したpML4の大腸菌を検査できる条件を確立した。従来のHITECマウスの系では突然変異体の検出に形質転換効率の高い大腸菌への導入法を検討し、1回のDNA導入で総数2x10^5個の大腸菌RR-1(recA^+)を用いていたが、この方法により、大腸菌HB101(recA^-)を用いることが可能になった。大腸菌HB101を用いた場合、1回のDNA導入で検査できる大腸菌総数が1/3〜1/2に減少するが、バックグランドとして出現する突然変異体数は1/20〜1/10に減少し、全体として突然変異体の検出限界が下がり、従来の系よりも鋭敏な系を確立することができた。現在、DNA除去修復欠損が加齢と共に体細胞の自然突然変異にどの様な影響を及ぼすかを調べるために、20、50週齢の各遺伝子型のマウスを得て、それらの主要組織から今回確立した方法によりDNAを調製し、自然突然変異頻度及び種類の決定を行っている。 2)変異原による誘発突然変異と発癌との相関関係:2000J/m^2のUV線量を週3回照射することにより、XPAマウスのみにUV発癌が観察された。このUV線量で照射された部位は、UVは照射していない部位と比較して突然変異体の出現が2〜3倍上昇することを認めた。しかし、この差は、全ての遺伝子型(XPA^<+/+>,XPA^<+/->,XPA^<-/->)でみられ、UV発癌実験の結果とは一致していないようにみえる。この実験では皮膚組織全体からDNAの抽出を行ったが、表皮細胞のみからDNAの抽出を行い、突然変異体出現頻度の比較検討を行っている。
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