申請者は、細胞老化・不死化過程におけるSSRP1の機能について2年間の研究期間に以下の成果を収めた。 1.SSRP1は不死化前の若い細胞と不死化細胞において転写抑制活性を示した。この転写抑制活性は、細胞老化依存性転写抑制因子Orpheusの結合活性の有無と一致し、その結合部位を変異させると認められなくなった。 2.SSRP1のmRNAの発現は細胞老化過程でほとんど変化せず、不死化後も老化期のたかだか1.5倍であった。これはサウスウェスタン・ブロットによって調べたSSRP1蛋白の発現量の変化と一致していた。 3.SSRP1特異的ポリロリナ-ル抵抗でスーパーシフトアッセイを行ったところ、Orpheusのバンドには変化は認められなかった。つまり、Orpheusの結合活性中にSSRP1は含まれていないことが示唆された。 4.chemical footprintによりISE2中のOrpheus結合配列の5′側に隣接した領域に弱りfootprintが認められた。その配列に2bpの置換変異を導入した結果、一つの変異体で野性型に比べ約4倍の転写活性の上昇が認められた。 このもう一つの転写抑制因子がSSRP1である可能性を検討するため、SSRP1のレコンビナント蛋白のISE2に対する結合能をサウスウェスタン・ブロット、ゲルシフト・アッセイによって検討した。SSRP1のISE2への結合は、サウスウェスタン・ブロットでは検出可能であるにもかかわらず、ゲルシフト・アッセイではどうしても検出することができなかった。この理由は明らかでないが、SSRP1が分子内にDNA結合を抑制するドメインを持っている可能性、あるいは他の因子と相互作用しているときのみDNAに結合できるようになる可能性等を今後の研究において慎重に検討する必要がある。
|