研究概要 |
平成8年度は,ほぼ計画に従って研究が実施された. マウスの初期胚では2細胞期に発現の高いクローンとして単離されたSSEC-D cDNAは,その内部に強力な2次構造を取り得る配列が存在し,昨年度以来その全長cDNAの取得に苦労してきた.以前の2細胞期のcDNAライブラリーから単離した26個のクローンはいずれも短く,また5'RACEもうまく行かなかったが,今回新規の2細胞期cDNAライブラリーよりほぼmRNAの全長(約900bp)に相当すると思われるクローンを単離できた.以前から予想翻訳領域の下流に細胞質でpolyA配列を付加するのに必要とされるcytoplasmic polyadenylation element様の配列を見いだしていたが,面白いことに初期胚の各時期のRNAに対してRNAblot解析を行ったところ,このmRNAは受精後10時間から15時間前後にそのmRNAが伸長することが判明した.翻訳調節との関連が極めて興味深いが,まずはこの伸長がpolyAの付加によるものかどうかを検討している.成体マウスでは種々の組織で伸長型のmRNAが産生されていることから,初期胚と成体マウスでの発現の機能的差異が想定できる.抗体等の作製も同時に進行中であるが,遺伝子クローンの解析では少なくとも3個のエキソンを同定した. B1配列含有クローンについてもその塩基配列決定を進め,2細胞期に発現するB1配列に特に構造的な特徴はないものと判断した.また明解なB1配列はないものの,クロマチン構造を修飾するタンパク質MOD2のcDNAについてはその全一次構造を決定し,また遺伝子クローンの単離から,これらが偽遺伝子を含む多くの遺伝子群を形成することを見いだした.同様の解析を他のいくつかの遺伝子についても進めている.
|