研究概要 |
本年度は、研究テーマの基盤となる「ヒト染色体DNAからのベントDNAの選択的単離法の開発」を進めた。具体的には以下の実験を行った。まず、ベントDNAに高選択的にハイブリダイズするビオチン化オリゴヌクレオチド(以下オリゴと略す)を用意した。今回、5'-TTTTNNNNNNTTTTNNNNNNTTTTNNNNNNTTTT-3' (N; A, G, C,またはT)なる配列のオリゴを用いた。次に、これをヒトゲノムDNAの制限酵素による消火物と混合し、消化物中のベントDNA断片にハイブリダイズさせた。そして最後に、ストレプトアビジンを結合した磁気ビーズを用いてベントDNAを回収した。この方法は、ハイブリダイゼーションを分画原理とした新規のものである。一連の作業に要する時間は4〜5時間であった。そして、最適条件下では、500塩基対以上のDNA断片に関して80%以上の割合でベントDNA断片をクローン化できた。二次元ゲル電気泳動法を分画原理とした従来法では、ベントDNAのクローン化率は約75%であった。また、ベントDNAを単離するのに最短でも約2日間必要であった。したがって、4〜5時間でベントDNAが単離できる今回の方法は画期的なものといえる。さらに、繁雑な操作を一切必要としない点も今回の方法の長所である。現在、配列の異なるオリゴを用い、ベントDNAのクローン化率をさらに高める検討を行っている。一方で今年度は、プロモーター機能の解析のために購入したルミノメーターを用い、COS細胞を用いたルシフェラーゼアッセイの実験条件の検討を行った。以上、今年度は、当該研究テーマの基盤となる要素実験技術の確立を目指し、一定の成果を納めることができた。
|