フォークヘッドドメインをもつ遺伝子ファミリーは多数存在し、それぞれが異なったコンパートメントの発生分化に関わっていることが期待されている。我々が新しくクローニングした遺伝子hai-1はそのファミリーの一員であり、肺にのみ分布していることから肺形成に重要な役割を果たしていることが期待される。 まず、ノーザン解析の結果、hai-1遺伝子は肺にのみ発現していることが再確認できた。次に、インサイチュウハイブリ法により、肺内のhai-1 mRNAの分布をみてみると、細気管支上皮細胞とII型肺細胞に発現していることが明らかになった。このことは、hai-1が肺の系譜蛋白である可能性を示唆しているので、非常に興味深い事実である。 hai-1蛋白の標準遺伝子についての検討では、サーファクタント蛋白B遺伝子のプロモーターに対するhai-1蛋白の効果を調べた。その結果、hai-1蛋白はそれ単独ではサーファクタント蛋白Bプロモーターに影響を与えないが、他のメンバーであるHNF-3αと共に作用して、サーファクタント蛋白Bプロモーターの転写を活性化することが判明した。肺内でのファミリー遺伝子間の共同作用を意味しているものとして興味深い。 次に、マウス染色体hai-1遺伝子のクローニングをおこない、得られた13個のゲノミッククローンの解析の結果、マウス染色体hai-1遺伝子はイントロンを一つ持っており、イントロンはフォークヘッドドメインよりカルボキシル末端側であることも判明した。さらに、hai-1遺伝子の機能を知るため、現在ターゲティングベクターを作り、ノックアウトマウスを作製しようとしている。
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