アフリカツメガエル卵無細胞DNA複製系においてDNA複製を調節している調節因子の検索を目的として、以下の実験を行った。酵母およびヒトの細胞のDNA複製を調節していると仮定されている2つの蛋白質(Cdc46またはP1Cdc46とMCM3またはP1蛋白質)の部分アミノ酸配列を人工的に合成し、それぞれの抗体を作成した。これらの抗体を用いて、これらの抗原となりうる蛋白質の存在をアフリカツメガエル卵無細胞DNA複製系で調べた。その結果、それぞれに対応する95と102kDaの蛋白質が存在し、これらは他の3つの蛋白質と結合し、1つの複合体を形成していることを見い出した。また、DNA複製系からこの複合体を免疫沈降により除去するとDNA複製が起こらなくなることから、この複合体がDNA複製に関与していることを明らかにした。さらに、この複合体のP1蛋白質の過剰なリン酸化により、この複合体は核より遊離し、DNA複製を抑えること、リン酸化にはDNA依存リン酸化酵素が関与していることを示唆した。最近、この複合体が1細胞周期で1回のDNA複製を許可するライセンス因子であることが他の研究グループにより明らかにされ、さらに、この因子が複製開始認識複合体(ORC)に結合し、複製開始を調節していることが明らかにされた。そこで、今日、これらのDNA複製調節因子がDNA複製開始を具体的にどのようなメカニズムで調節しているのか、というさらなる問題が提起されており、その解明のため、これら複製調節因子と複製開始蛋白質(本研究の前年度報告)との関連の究明が持たれている。
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