ヒト皮膚線維芽細胞を2次元のコラーゲンマトリックス上で培養すると、細胞自身のコラーゲン合成活性は、細胞をポリスチレン培養皿に直接播種した場合より若干高い値を示した。一方、細胞を3次元のコラーゲンマトリックス内で培養すると、ゲル濃度(0.08-0.3%)に拘わらず、細胞の増殖とコラーゲン合成活性は阻害された。細胞の形態は2次元のコラーゲン上では細胞はマトリックスに密に接着し、扁平な形態を示した。一方、3次元のコラーゲンゲル内では、細胞は細長い突起を持つ形態を示した。[^3H]-プロリン標識蛋白質をSDS/5%ポリアクリルアミドゲル電気永動後フルオログラフィーを行った。その結果、3次元のゲル内におけるα1(I)鎖、α2(I)鎖の減少が顕著であった。さらに、ノーザンブロット法による測定でも、ゲル内培養により、α1(I)鎖とα2(I)鎖mRNAレベルの低下が顕著であった。α1(I)鎖遺伝子のプロモーター(転写開始部位を+1としてその上流-500bpから第一エキソンの翻訳開始部位の前まで)を含むコンストラクト、第一イントロンを含むコンストラクト、及び遺伝子の上流-2200bpを含むコンストラクトを作成し、正常線維芽細胞にトランスフェクト後、プラスチック培養皿、2次元のコラーゲン上、或いは3次元のコラーゲンゲル内で培養し、ルシフェラーゼ活性の測定を行った。その結果、2次元のコラーゲン上では、染色体内の遺伝子と同様に、プロモーターの下流にセンスの方向に第一イントロンを含むコンストラクトが最大の発現活性を示した。一方、3次元のゲル内では、プロモーターの上流に第一イントロンをアンチセンスの方向に結合したコンストラクトの発現の阻害が最大であった。 細胞は細胞自身の位置情報を認識し、コラーゲン遺伝子の発現を転写レベルで制御しており、第一イントロンにその認識(応答)配列が局在する事が明らかになった。
|