研究概要 |
我々がショウジョウバエ時計遺伝子(PER遺伝子)をプローブとして酵母遺伝子ライブラリーからクローニングしたGTS1遺伝子は、DNA合成非依存的に出芽に必要な細胞サイズを変化させ、出芽のタイミングを調節する、つまり細胞周期のリズムを調節する遺伝子で、酵母における時計遺伝子ホモログである可能性が示唆される。この遺伝子のコピー数を変化させ、GTS1遺伝子産物(Gts1p)の機能について検討した。その結果Gts1pが増加すると酵母の耐熱性が高くなる、分裂寿命が短くなる、胞子形成開始のタイミングが遅くなる現象が観察された。酵母Two-Hybrid Systemを使って機能領域を検索したところ、Gts1pはホモダイマーを形成して機能し、ホモダイマー形成に必要な領域が、あるグループのABCカセットタンパク質とヘテロダイマーを形成することが明らかとなった。またGts1pを高発現した株で、シクロヘキシミド、カドミウム耐性が野生株に比べ優位に減少していた。したがってGts1pはABCカセットタンパク質とヘテロダイマーを形成し薬剤の体外排出を阻害する事により、薬剤耐性を減少させるものと考えられる(投稿準備中)。一方細胞内でGts1pと相互作用する蛋白質をTwo-Hybrid Systemで検索したところ、いくつかのポジティブクローンの中に解糖系の酵素2種類Glyceraldehyde-3-phosphatedehydrogenase,Pyruvate kinaseが含まれていた。解糖系はエネルギー産生系として酵母細胞の出芽に関与しているので、GTS1遺伝子の破壊株、多コピー株及び野生株の3種の株を用いてGtslpの解糖系のultradian oscillation(NADH量を指標とした)に対する効果を検討した。その結果3種の株の間でoscillationの数に変化はにられなかったが、野生株に比べ破壊株で最も振動が強く持続時間も長かった。逆に多コピー株では振動が弱く持続時間も短かった。この変化は加えたグルコースの取り込みの変化によるものではなかった。したがってGTS1遺伝子産物は解糖系のリズムに影響を与えているものと考えられる。
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