研究概要 |
本研究は、リソソーム膜蛋白質の細胞質領域を認識しリソソームへの移行を仲介する細胞質因子を同定し、さらに、このような細胞因子のリソソーム膜蛋白質の選別・輸送過程における分子認識機構を解明することを目的とする。 ラット肝より調製した細胞質画分を分子量85,000のリソソーム膜蛋白質(LGP85)の細胞質領域に対する合成ペプチド固定化カラムに流し、様々な溶出条件を検討したところ、細胞質因子はpH3で溶出されること、さらに、ゲル濾過により細胞膜因子の分子量は約280,000であったが、SDS-電気泳動の結果から分子量60,000および35,000のサブユニットから成るヘテロオリゴマーを形成していることが判明した。このような精製過程での細胞質因子の有無は、LGP85細胞質領域の合成ペプチドを西洋ワサビパーオキシダーゼで標識したプローブを作成し、ドットブロット法により確認した。また、細胞質因子とプローブの結合は過剰量のペプチドで阻害されたことから特異的である。現在、細胞質因子の特異的抗体の作製およびアミノ酸配列について検討中である。 また、ラットLGP85のcDNAを真核細胞発現用ベクターに組み込み、COS細胞に発現させた結果、細胞内に大きな空胞が出現し、この空胞にLGP85が局在していた。この空胞の出現は、LGP85の細胞質領域が必要であった。さらに、この空胞には内在性リソソーム膜蛋白質に加えエンドソーム蛋白質も局在していたことから、LGP85の細胞質領域はエンドソームとリソソームの融合を促進することが示唆された。現在、上述した細胞質因子がエンドソームとリソソームの融合にどのように関与しているかについて、in vitro実験系で検討している。
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