研究概要 |
我々は、過酸化水素(H_2O_2)がEGFレセプターのチロシンリン酸化を促進することを見出した。このH_2O_2によるチロシンリン酸化機構について解析するため、EGFレセプターを持たないマウス細胞株A9に正常型およびキナーゼ活性欠損変異型EGFレセプター遺伝子を導入した細胞株を作製した。各細胞を^<23>P無機リン酸で標識しH_2O_2処理後、EGFレセプターを免疫沈澱し、電気泳動後、ホスホペプチドマッピング法でチロシンリン酸化部位を検出した。正常型EGFレセプター(Wtレセプター)を発現する細胞ではH_2O_2処理により顕著なWtレセプターのチロシンリン酸化(Tyr1068, 1086, 1148, 1173)が認められた。自己リン酸化能を欠きEGFではリン酸化が促進されない変異型EGFレセプター(721Mレセプター)においては、H_2O_2処理によりTyr1086と1173にチロシンリン酸化が認められた。一方、免疫沈澱法で精製したEGFレセプターでは、H_2O_2処理によりチロシンリン酸化促進は認められなかった。従って、H_2O_2はレセプターキナーゼを直接活性化しないが、H_2O_2により活性化されたキナーゼ(H_2O_2-TyrK)がEGFレセプターをチロシンリン酸化することが示唆された(準備中)。そこでA9細胞からH_2O_2-TyrKの精製を目的に、Triton X-100可溶性分画を調製しHiTrap Qカラムで粗分画し、免疫沈澱法で精製した721Mレセプターを基質に用いて検討した。H_2O_2処理した細胞の0.2-0.4M NaCl溶出分画にのみ721Mレセプターをチロシンリン酸化する活性が検出され、H_2O_2により活性化されるH_2O_2-TyrKの存在が証明された。さらに、膜近傍に存在するH_2O_2-TyrKが、酸化ストレス応答に重要な役割を果たすことが示唆された。
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