チューブリンのα-、β-サブユニットはアミノ酸配列の共通性が高く(相同性30%以上)、ポリグルタミン酸付加のように両サブユニットに共通に見られる翻訳後修飾が知られている。成熟脳チューブリンの両サブユニットの翻訳後修飾アイソフォームと反応するモノクローナル抗体K9は、胎児脳ではα-サブユニットとのみに反応する。この脳の発達に伴って反応性の変化する抗体のエピトープは、これまでの予備的研究から、既知の翻訳後修飾部位とは異なることが示されている。本研究の目的は、この抗体の認識部位が新たな翻訳後修飾であるのか、両サブユニット間共通部位であるのかを明らかにすることである。ラット成熟脳精製チューブリンをタンパク質分解酵素により切断し、HPLCで本抗体と反応するペプチドを分離した。分離した反応ペプチドのアミノ酸配列とマススペクトル分析および合成ペプチドとの反応性から、エピトープは翻訳後修飾部位ではなく、極めて相同性の高いα(A_<403>-E_<415>)とβ(A_<393>-E_<405>)であることが示された。以上の結果は、この相同部位のコンホメーション変化がポリグルタミン酸付加と予想される翻訳後修飾により誘起されることを強く示唆する。翻訳後修飾が両サブユニット相同部位のコンホメーションに影響を与えること、この部位がMAPs結合部位の近傍でもあることから、本抗体は翻訳後修飾の意義を考える上で有用な武器となると思われる。
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