Kuタンパク質に対して特異的に反応する抗体を用いて細胞周期(特にS期からG2/M期にかけて)における細胞核機能構造の変化とKuタンパク質の分布変化が密接に関連していることを明らかにした。またKuタンパク質の核機能構造における役割を明らかにするための基礎研究としてDNA複製やM期染色体形成を阻害する事によって細胞周期を人工的に阻害したときの核構造やそれに関連した細胞質構造の変化についての研究を行い、核分裂を伴わないで中心体の複製が起こる条件を見出した。これらの中心体は核表面に結合しているので、いまだ未知の核構造と連結している可能性が示唆された。他方、核機能構造の変化とKuタンパク質を初めとする核機能構造を構成するタンパク質との係わりを明らかにするために、ツメガエル(Xenopus laevis)卵抽出液中での試験管内核再構成系を用い、ヘミンに結合する特殊なタンパク質の分離とその核再構成における役割についての新しい知見を得た。ツメガエル卵核再構成系のこれらのタンパク質に関する知見を基にして核機能構造形成に関するKuタンパク質の役割を明らかにするため、ツメガエルKuタンパク質の遺伝子クローニングを行った。クローニングしたcDNAを解析することによってKu複合体を形成する70kDa及び80kDaサブユニットの全ヌクレオチド配列を決定した。Ku複合体はその機能が極めて多岐にわたっていることが明らかにされている。また構造の若干異なる分子種が存在する可能性も指摘されているので、Ku複合体に関して挙げられている諸機能がアミノ酸配列が部分的に異なる分子によって分担されている可能性を否定できない。そこでこの可能性を検討するため、Ku80kDaサブユニットタンパク質のcDNAをツメガエル卵より多数調製し、そのメクレオチド配列より予想されるアミノ酸一次配列を比較・検討した。まずN-末端に近い部分を集中的に分析しているが、現時点では異なる配列を持つ分子種を見出すには至っていない。
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