すべての真核細胞内で有糸分裂や細胞内輸送など多様な機能を果たす微小管制御機能の解明は重要な課題である。我々が単離した出芽酵母βチューブリンC末端欠失変異の多コピーサプレッサーYTM1は460アミノ酸残基よりなるβ-transducin(WD-40)repeatのある蛋白質をコードする。YTM1は核蛋白質であり、分裂後期細胞ではスピンドル微小管上に観察され、in vitroで微小管結合活性を示す。YTM1遺伝子の機能はG1→S移行に必須である。本研究ではYTM1の働いている機構を具体的に解明することを目的として研究を行っている。 YTM1の細胞内局在をより詳細に観察したところ、スピンドル微小管上に観察されるのみならず、一部の細胞では細胞質微小管にも局在して観察されることが分かった。一方、αファクターを用いて同調培養した酵母細胞粗抽出液をWestern blotにより解析したところ、細胞周期の進行によって総YTM1量は著しく変化はしないが、M期に若干増加するのが観察された。リン酸化その他による活性調節を受けているのかもしれない。YTM1の一次構造はWD-40モチーフ以外に既知の蛋白質と顕著な相同性を示さないが、最初のWD-40配列より上流のN末端約80残基は幾つかのRNA helicaseやATP依存性プロテアーゼの部分配列と若干の相同性を示す。YTM1は多機能で、M期ではスピンドル伸長に働き、G1期ではRNA合成系あるいは蛋白分解系において必須な機能を果たしているかもしれない。 一方、真性粘菌より半数体細胞をストレス処理した時に特異的に発現するストレス結合蛋白質p66のcDNAを単離したところ、p66はYTM1と同様にWD-40repeatを持つ蛋白質で、出芽酵母AIP1(Actin Interacting Protein 1)の真性粘菌における相同蛋白質であった。WD-40repeatの持つ構造上の未知の機能の重要性が示唆される。
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