研究概要 |
骨格筋の分化における筋芽細胞の融合は、分化し始めた細胞がさらに骨格筋として成熟する引き金となる重要なステップであると考えられている。筋形成に関わりをもつ遺伝子のうち、このような筋芽細胞の融合に関与する遺伝子群の実体を明らかにする目的で、筋分化制御因子myogeninを誘導的に発現し、胎児性繊維芽細胞であるC3H10T1/2細胞を効率よく筋芽細胞に分化させる系を作成し、この系を用いて、ファミリーを形成する新しい遺伝子群meltrin α,β,γをクローニングすることに成功した。 これらの遺伝子は卵と精子の融合過程に関与すると考えられる膜タンパク質PH30に相同性のある分子郡をコードしており、このうち筋分化に伴いその転写が著しく活性化されるmeltrin αが、筋管形成に関与していることを明らかにした。 meltrin αタンパク質はメタロプロテアーゼドメインおよびディスインテグリンドメインをもち、筋管形成過程で、筋分化初期のマーカーである転写因子myogeninとともに発現誘導を受ける。マウスにおいては、胎児期から新生児期の筋細胞および骨において特異的に発現がみられ、その遺伝子構造や発現パターンから、筋分化および骨形成における、同種あるいは異種の細胞間相互作用あるいは細胞外マトリックスとのかかわりにおいて重要な機能をもった膜タンパク質ではないかと考えられる。 この様な遺伝子の存在は、筋管形成と受精に、共通したメカニズムのあることを強く示唆するものである。
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