研究概要 |
平成7年度の研究成果 われわれは数年前に、哺乳動物細胞において約40kDaのHsp(Hsp40)を見い出した。Hsp40はバクテリアのDnaJと相同性があった。熱ショックによりHSP40はHSP70と共に細胞質から核・核小体内へ移行し、再び細胞質へ戻ってくる。この2つのHspの熱ショックに伴う細胞内移行の動態はほとんど同じであり、同じ細胞の同じ核小体にcolocalizeしていた。しかし、熱ショックによるHsp40およびHsp70の核内移行のメカニズムはいまだに解明されていない。 Hsp40およびHsp70の熱ショックによる核内移行の動態を更に詳細に検討した。Hsp40とHsp70は細胞質において複合体を形成しており、熱ショックに伴って一緒に核内へ移行し、核小体で局在を同じくすることをいくつかの哺乳動物細胞で確かめられた(Cell Struct. Funct., 20, 157-166, 1995; FEBS Lett., 358, 161-164, 1995)。 Histidine tagをつけたHsp40のNiカラムによる精製法を確立した。また大腸菌で大量発現しているヒトHsp70をATPagaroseにより精製することができた。これらのHspを用いて生化学的研究を行なった。Hsp40はHsp70のATPase活性を促進することができ、またこの促進活性は45℃というストレス条件下で最も高いことが判明した。更にHsp40とHsp70は共同して変性蛋白質の凝集を抑制することが分かった。これらの結果から哺乳動物細胞におけるHsp70-Hsp40シャペロン系の存在が証明された。 なお、Hsp40がNLS(nuclear localization signal)を持つかどうかについては、現在Hsp40の欠失変異体や点突然変異体を作成中であり、これらの蛋白質を用いてセミインタクト細胞により、検討する予定である。
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